平成4年8月1日以降に成立した建物の賃貸借契約は、この年から改正・施行された「借地借家法」が適用されます。建物の賃貸借契約はおおむね次の2種類に分類されます。
建物の賃貸借
- 普通借家契約:更新ができる契約
- 定期借家契約:地方転勤の間だけに限定して賃貸したい場合など、更新はしないことを前提とした契約
貸主と借主の立場の違いによって、問題を解決するための視点が異なってきます。当事務所は、貸主・借主のいずれの立場からのご相談もお受けしています。
1.建物賃貸借契約の期間の満了:法定更新
「普通借家契約」は原則として更新ができる契約です。更新をしたくない場合には、次の2段階の手続が必要です。
(1)期間満了の1年前から6か月前までの間に、相手方に対して「更新しない旨の通知」「条件を変更しなければ更新しない旨の通知」をする。
この通知をしなければ、それまでと同一の条件で更新したものとみなされます(ただし、賃貸借期間は定めがないものとされます)(借地借家法第26条第1項)。
(2)賃貸借期間後に借主が使用を継続する場合は、貸主は「遅滞なく異議を述べる」必要がある。
異議を述べなければ、更新したものとみなされます(同条2項)。
なお、これらの通知や異議は、自己使用の必要性などの「正当事由」が備わっていなければならず、これがない場合は更新があったものとみなされます(法定更新)。
このように、普通賃貸借契約では、法律で定める期間内に、法律が定める条件を満たす必要があり、法定更新としないためには、しっかりした段取りが必要です。
2.借主から貸主への中途解約申し入れ
借主側の事情によって、契約期間が来る前に他に移転したい場合があります。契約書の中に「中途解約権」(借主から貸主に対して「○か月前までに解約通知を出す」「○か月分の賃料を支払って解約する」などの条項)が明記してあれば、これに基づいて中途解約ができることになります。解約申し入れの期間は、個別の契約によって異なりますから、初めに契約するときに、しっかり確認しておくことが大事です。期間が長ければ、移転の準備は相当の余裕を持つ必要が出てきますし、また新規の移転先の賃料と重複支払いをしなければならない期間が長くなります。
中途解約条項がない場合は、貸主が合意してくれない限り、法的には難しいことになります。現実には、不動産業界の慣行として、数か月の期間を置いて合意解約に応じてくれることが多いようです。いずれにしても、当初。契約内容をしっかり確認しておくことが大事です。
3.借主への明渡請求
家賃の滞納、無断増改築、用法違反、賃借権の無断譲渡・転貸などの事情があれば、契約を解除して、明渡しを請求することができます。これも借地と同様に、「信頼関係を破壊」する程度の義務違反であることが必要です。
条件を満たせば、裁判の提起ができますが、判決で明渡しが認められた場合でも、借主が自主的に退去しない場合は強制執行をせざるを得ず、時間と費用の負担が大きいのが現実です。このようなご相談を受けた場合、当事務所では、費用の見通しもご説明し、訴訟だけに限らず合理的な解決を目指して、相手方との交渉も含めたご提案をしています。
弁護士より
居住用の建物の賃貸借契約は、将来問題を起こさないような契約内容とすること、契約継続中に問題が生じたら、早めに対応することが肝心です。弁護士への「相談」で解決できるケースが比較的多いといえます。
弁護士費用
[不動産明渡訴訟]
対象となる不動産の時価の2分の1を「経済的利益」として、当事務所の一般民事事件の弁護士報酬基準に基づいて、着手金と報酬を計算します。