法律上の父・母は未成年の子に対して扶養義務などを負い、また子は父・母の財産を相続する権利があります。法律上(戸籍上)父母となっている人が実父・実母ではない場合や、実父との親子関係が戸籍に記載されていない場には、このような権利義務関係が、真実の親子関係に基づかないものになってしまいます。これを事実に合わせるため、法的手続をとることができます。
1.未婚で生まれた子どもを認知してもらいたい(父子関係を確定する手続)
婚姻関係にない父と母の間に子どもが生まれた場合、戸籍に父親は記載されず、法律上父親が存在しないことになります。このような場合は、法的手続によって養育費を請求できず、父が亡くなった時にも子は相続ができません。
実の父親を戸籍上も明確にしたい場合は、戸籍役場に、父親から「認知届」を出してもらえばよいのですが、相手がこれに応じてくれないことがあります。
このような場合には,子どもから(未成年であれば親権者である母から)父を相手として、家庭裁判所に認知の調停を申し立てることができます。調停において,子どもがその父の子であるという合意ができ,家庭裁判所が必要な事実の調査等を行った上で,その合意が正当であると認めれば,合意に従った「審判」がなされます。この審判を添えて、認知届をすることになります。
調停で合意ができないような場合は、認知請求の本裁判を行うことになります。交際当時の状況を明らかにして、その父の子に間違いないことを証明しなければなりません。
認知届を出すことを希望しても、相手が出してくれない場合は、調停などの家庭裁判所での手続きをとらざるを得ません。裁判所に行っても、相手は否定する場合が多いでしょう。このように争いがあるケースについてご依頼を受け、代理人として調停の申し立てから対応いたします。
認知がされると,出生のときにさかのぼって法律上の親子関係が生じることになります。
2.妻の不貞で生まれた子どもが自分の子どもでないことを明らかにしたい:父からの嫡出否認
婚姻中(または離婚後300日以内)に生まれた子どもは,その夫婦間にできた子(嫡出子)と推定されます。このため,実際には夫以外の男性との間に生まれた子どもであっても、出生届を提出すると、その夫を父親として戸籍に入籍されることになります。その後離婚しても、法律上は、婚姻中の夫の子どもであるという立場に変わりはありません。
夫であるあなたが、その子どもがあなたの嫡出子ではないことを法律上明らかにするためには,家庭裁判所に対して,嫡出否認の調停を申し立てる必要があります。この調停において,子どもが夫の子どもではないという合意ができ,家庭裁判所が必要な事実の調査等を行った上で,その合意が正当であると認めれば,合意に従った審判がなされます。調停で合意ができない場合は、嫡出否認の本裁判を行うことになります。
嫡出否認では、認知届のように、届出だけで戸籍に事実を記載してもらうことができず、調停や裁判の手続きが必要となります。このような手続きについてご依頼を受け、代理人として調停の申し立てから対応いたします。
なお、この申立ては,民法により,夫が子の出生を知ったときから1年以内にしなければなりません。ただ、その時期を過ぎたケースでも、「親子関係不存在確認」の申立てによって解決できる場合もありますので、ご相談ください。
3.夫以外の男性との間にできた子どもの戸籍上の父を実父に変えたい:母からの親子関係不存在確認
婚姻中(または離婚後300日以内)に生まれた子どもは,その夫婦間にできた子(嫡出子)と推定されます。このため,実際には夫以外の男性との間に生まれた子どもであっても、出生届を提出すると、その夫を父親として戸籍に入籍されることになります。その後離婚しても、法律上は、婚姻中の夫の子どもであるという立場に変わりはありません。
しかし、夫が長期の海外出張,受刑,別居等で、子の母との性的交渉がなかった場合など,妻が夫の子どもを妊娠する可能性がないことが客観的に明らかな場合には,「夫の子である」との推定を受けないことになります。そのような場合には,前の夫を相手として親子関係不存在確認の調停を申し立てたり,子から実父を相手として認知請求の調停を申し立てることができます。これらの調停も、合意に至らなければ本裁判をすることができます。
このような手続きについてご依頼を受け、代理人として調停の申し立てから対応いたします。
4.母子関係不存在確認の手続(母子関係を確定する手続)
何らかの事情で、戸籍上、真実の母親ではない人の子どもになっている場合があります。たとえば、婚姻外の女性から生まれた子を、夫婦間の子として出生届を出したような場合、父の妻は子の母ではないのに、戸籍上(法律上)「母」となってしまいます。
戸籍上の母と母子関係がないことを確認し、あわせて真実の母と母子関係があることを確認するため、戸籍上の母を相手に母子関係不存在確認の調停や裁判を行うことができます。
このような手続きについてご依頼を受け、代理人として調停の申し立てから対応いたします。
弁護士より
これらの問題は、夫婦関係・男女関係の破綻や、関係の維持が大きな困難に直面するなど、当事者同士だけでなく関係者も複雑な人間関係に巻き込まれて、精神的に疲れ切っている場合が多いものです。しかし、子どもはそのような親たちの世界とは関係なく日々成長し、社会とのつながりは次第に増えていきます。社会とのかかわりがより少ない、より幼い間に、法律的な環境を整えてあげることが望ましいでしょう。
弁護士費用
[着手金]
30万円(+消費税)を目安とします。
本裁判に移る場合は、10万円(+消費税)の追加をお願いします。
[報酬]
着手金と同額程度となります。
[実費]
通常の実費のほか、DNA型鑑定の費用として10~20万円が必要となります。