建築工事においては、注文主から工事を直接請け負った元請負人が直接すべての工事を行うことはまれで、工事を細分化して下請けに出し、下請けはさらに孫請けに出すなど、契約が重層的になるのが通常です。
下位に立つ下請負人ほど厳しい条件を強いられる結果となるのを防ぐため、下請負人保護の観点から、「建設業法」「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)」「下請代金支払遅延防止法(下請法)」などが定められています。
1.下請契約を結ぶ
下請契約に建設業法の適用がある場合は、次の点に留意する必要があります。
(1)信義誠実の義務を負います
契約内容は、元請負人と下請負人との間で話し合い、その合意に基づきますが、下請契約の原則を定める建設業法18条は、「各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない」と定めています。
(2)一括下請けは禁止されます
元請負人・下請負人とも義務を負います。違反した場合、契約は無効にはなりませんが、国土交通大臣または都道府県知事による監督処分の対象になります。
(3)不当に低い請負代金は禁止されます
特に、著しく低い下請代金は、「下請法」で禁止されています。
下請契約については、国土交通省が「建設工事標準下請契約約款」を作成しています。典型的なものとして参考になりますし、これを添付して契約することができます。
2.前払い・出来高払いを請求できるか
下請契約で、前払いや出来高払いの特約をしている場合には、これらの要求ができます。特約がなければ、要求はできません。工事期間が長期にわたる場合など下請契約当時に下請代金の見積りが難しい場合は、このような特約をしておくことを考えましょう。
3.下請代金を支払ってもらえない
下請工事が完了し、約束の支払日が来たのに、元請負人から下請代金を支払ってもらえない場合があります。元請負人は「注文主からまだ支払いがないから」という理由では、支払いを断ることはできません。
下請負人は、完成部分の引渡しをしないで「下請代金を支払ったら引渡す」ということができます。また、「債権者代位権」という権利に基づいて、元請負人の注文主に対する元請代金の請求をすることもできます。
注文主に対して何らかの請求ができるか、元請負人に対して、どのような法律構成でどのような請求をするかは、複雑な法律問題になります。また解決のために、建設業法上負っている行政上の義務の履行を求めることが有効な場合もあります。
当事務所は、元請、下請、孫請けなどにわたる複雑な関係の中で効果的な解決を目指してご相談にのり、建設工事紛争審査会での解決、裁判手続きによる解決をお引き受けします。
弁護士費用
請求する(される)工事代金額を「経済的利益」として、当事務所の一般民事事件の弁護士報酬基準に基づいて、着手金と報酬を計算します。
経済的利益の額
300万円以下の場合
着手金:8%(最低10万円)
報酬:16%
300万円を超え3,000万円以下の場合
着手金:5%+9万円
報酬:10%+18万円
3,000万円を超え3億円以下の場合
着手金:3%+69万円
報酬:6%+138万円